建設DXで活きる「映像から揺れを測る技術」をやさしく解説

建設現場では、構造物の揺れ・変形・沈下・たわみなど、ほんの数ミリの動きが安全性に直結する場面が多くあります。
これまでは、計測器の設置・養生・取り付け作業が必要で、現場ごとに手間やコストも変わっていました。
「カメラで撮影した映像から、対象物の動きを自動で読み取り、ミリ単位で計測する」 という新しいアプローチを我々は考えています。
ここでは、難しい数式やプログラムは一切使わず、現場の人にも分かるように、この技術がどんな仕組みで動いているのかを丁寧に説明します。
1. カメラで撮影した映像を、そのまま「計測データ」に変える時代
この技術が目指しているのは、撮影した動画を“そのまま計測に使う”という世界です。
従来は、建物や設備の変形を計測するために
- 変位センサーの設置
- レーザー距離計の固定
- ターゲットマーカーの貼り付け
など、準備だけでかなり時間と手間が掛かっていました。
しかし、AI による画像認識技術が進歩したことで、わざわざ機材を取り付けなくても、カメラ映像だけで“対象物の位置を追跡できる”ようになっています。
2. 動画の最初の1枚を使い、「どこを追うか」を決める
計測のスタートはとてもシンプルです。
動画の最初の1枚を表示し、計測したい部分を四角形で囲むだけです。
例えば、
- 鉄骨の梁端部
- 足場の継手
- コンクリート壁の角
- 仮設支柱の頭部
- 配管の接続部
など、揺れや変位を見たい箇所を自由に選べます。
これは、「この部分をずっと見続けて、揺れを計測してね」という合図になります。
3. AI が対象物を“覚え”、動画の全フレームを自動で追跡する
四角で囲んだ後は、AI がその形を覚えます。
AI は、対象の
- 外形(輪郭)
- 色や模様
- コントラスト
- 影の位置
- 周囲との境界
といった特徴を読み取り、動画が進んでも同じ物体を見失わずに追跡します。
つまり、どれだけフレーム数があっても、AI が「これはさっきの物体だ」と認識し続けるわけです。
4. 動画を一気に読み込まず、“1フレームずつ”丁寧に処理する理由
建設現場の動画は、長時間・高解像度になることが多く、全部を一度に読み込むとコンピュータが動けなくなります。
そこで、このシステムは
- AI が「次は●番目のフレームを見て」と指定
- 動画プレーヤーが「はい、これがそのフレームです」と提供
- AI がそのフレームで対象物を見つける
という流れを1フレームずつ繰り返します。
こうすることで、
- 重い動画でも落ちない
- 4K でも耐えられる
- 長時間録画でも最後まで追跡できる
という、建設現場では非常に重要なメリットが得られます。
5. AI が見つけた位置を、ミリ単位の変位に変換する仕組み
AI が物体の位置を検出すると、それは「ピクセル(画素)」単位の座標として得られます。
しかし施工管理では mm が必要です。
そこで、このシステムは
最初に囲んだ四角形の実寸(10cm = 100mm)
を基準にして、変換係数を自動で計算します。
例えば、囲んだ部分が 200px だった場合、
100mm ÷ 200px = 0.5mm/px
つまり「1ピクセルが0.5mm」という意味です。
これを使うことで、動画中の揺れ幅をピクセル → ミリに換算できます。
これがあることで、動画がそのまま「計測機器」として使えるようになります。
6. 動きの軌跡をグラフ化し、“構造物の健康状態”を可視化する
全フレームの変位データが揃うと、時間軸に沿った「揺れのグラフ」が描けます。
これにより、
- どの瞬間に大きく動いたか
- 振動周期があるか
- 偏位(片寄った動き)が発生していないか
- 施工過程で揺れが増えていないか
といった現場判断が、誰でも明確にできるようになります。
グラフは報告資料にも使いやすく、発注者説明・安全書類・施工管理報告にも活用できます。
7. 動画に追跡線を描き込み、施工管理者が直感的に理解できる可視化映像を生成
最終出力として、元の動画に
- 検出した輪郭線
- 重心の位置
- ミリ単位の変位
を重ね合わせた「視覚的に分かりやすい映像」を作成します。
これは現場で「目で見て納得できる資料」として非常に有効で、
- 構造の健全性チェック
- 設備の振動診断
- 仮設材の揺れ評価
- 施工後の性能確認
- 事故調査・トラブル原因特定
など、多くの場面で役立ちます。
8. この技術が建設DXにもたらす価値
この技術の最大の価値は、「現場に機器を取り付けなくていい」という点にあります。
ただカメラで撮るだけで、
- 変位計の代わりになる
- 振動センサーの代わりになる
- 変形モニタリングの代わりにもなる
という、圧倒的な簡便性を持っています。
これは建設DXの本質である 「現場の負担を減らしつつ、データ活用の質を高める」 という方向性と完全に合致しています。
9. まとめ:動画ひとつで「揺れ」が数値化される時代
本システムの本質をまとめるとこうなります。
「動画から対象物の位置を自動で追跡し、揺れや変位をミリ単位で計測し、グラフと映像でわかりやすく可視化する」
現場に設置する機材はカメラだけ。 まだまだ検証は必要とは考えますが、あとは AI が自動的に解析し、施工管理に使えるでデータを提供できると思います。
建設現場の安全性向上、施工品質の証跡、設備保全の効率化など、幅広い分野で活躍できる「建設DXの新たな武器」と言えるでしょう。
