
「知っている」を「できている」に変える防災アプリ。
情報を並べるだけのアプリは、もう十分にあります。 このアプリが引き受けるのは、最初の一歩を決めることと、 誰も手をつけたがらない住まいのリスクです。
解こうとしている3つの断絶
防災が続かない理由は、意識の低さではなく、つなぎ目の欠落にあります。
平時と災害時の断絶
平時は備えの画面、警戒時は避難の画面。多くのアプリは片方しか持たず、いざというとき使い方を思い出せません。
情報と行動の断絶
警報も地図も見られる。けれど「で、自分は何をすればいいのか」が抜けています。情報の量は、行動を生みません。
被災前と被災後の断絶
片付けたあとで「写真を撮っておけば」と気づく。罹災証明も保険も、証拠がなければ進みません。
特徴
判断を助ける道具として、設計上ゆずらなかったこと。
1. 目的から逆引きする
災害の種類から入るのではなく、「備える」「被害にあったとき」から入ります。 目的を選ぶと、進む道順(危険を知る → 逃げ先 → 家族 → 持出品 → タイムライン)が先に示され、 何手で終わるかが分かってから始められます。
2. 公的情報と、アプリの提案を必ず分ける
気象庁の「警戒レベル相当」と、アプリ独自の行動区分(A0〜A4)を並べて表示し、混同させません。 行動区分は次の式で算定し、根拠も開いて確認できます。
行動区分 = min(4, max(公的情報からの区分, 現地異常からの区分) + 要配慮補正)
高齢者・子ども・乳幼児、支援が必要な方、避難に60分以上かかる方が登録されていると、1段階前倒しします。
3. 古い情報を、新しい情報として扱わない
すべての公的情報に発表時刻・受信時刻・出典を添えます。 受信から2時間更新できていなければ赤い警告を出し、「この表示を最新として扱わないでください」と明示します。 防災アプリで最も危険なのは、静かに古びた情報です。
4. 通信が切れても、避難場所は出る
全国115,785件の指定緊急避難場所をアプリに同梱しています。 地図タイルも端末に保存するため、圏外でも直前に見た範囲は表示できます。 災害時にサーバーが落ちても、通信が輻輳しても、手元で完結します。
5. あなたの情報を、集めない
住所・家族・写真・記録はすべて端末内にのみ保存します。当社サーバーへの送信はなく、 アカウント登録も、広告も、利用状況の分析もありません。 災害時に他人へ預けたくない情報こそ、預けなくていい設計にしました。
6. 自宅だけでなく、実家も旅先も
地点は何件でも登録でき、選んだ地点に合わせて警報・天気・地図・避難場所が切り替わります。 登録したどの地点の地域情報も、切り替えずに並べて確認できます。 離れて暮らす親の家の警報を、自分の端末で見られます。
擁壁・ブロック塀という、放置されてきた問題
このアプリが最も力を入れている領域です。
なぜ社会課題なのか
擁壁とブロック塀は、倒れると人が死ぬ構造物でありながら、 誰も点検していない状態で街じゅうに立っています。
- ブロック塀の倒壊による死亡事故は、1978年の宮城県沖地震で社会問題化し、 2018年の大阪府北部地震では通学路の塀が倒れ、登校中の小学生が亡くなりました。 同じ事故が、40年の間隔をおいて繰り返されています。
- 宅地擁壁の多くは高度経済成長期の造成によるもので、すでに築40〜60年の更新期に入っています。
- 擁壁が崩れると、住まいだけでなく道路をふさぎ、避難路と救助路を断ちます。 被害は所有者だけにとどまりません。
- 近年の記録的豪雨は、これまで崩れなかった斜面と擁壁を崩しています。 過去に無事だったことは、これからの安全を意味しません。
なぜ放置されるのか — 4つの壁
このアプリの解き方
診断はしません。代わりに、「相談すべきかどうか」を素人が判断できる状態まで運びます。 入口の壁と知識の壁を壊すことが、このアプリの役割です。
| 段階 | アプリがすること |
|---|---|
| ① 対象を分ける | 「壁の向こう側の土を支えているか」という1つの問いで、ブロック塀と擁壁を分岐。分からなければ「分からない」でよく、安全側(擁壁)として扱います。 |
| ② 見る場所を教える | ひび・傾き・ふくらみ・湧水・水抜き穴の詰まり・基礎の洗掘を、写真つきの図解で示します。「どこを見ればいいか」を言葉と絵で渡します。 |
| ③ 三段階で答えを出す | 緑(目立つ異常なし)/黄(要注意・要相談)/赤(近づかず早急に相談)。「不明」はすべて安全側に倒します。 |
| ④ 基準を残す | 平時の写真と結果を日付つきで保存。地震や大雨のあとに同じ位置・同じ角度で撮り直し、変化を比べられます。これが最も確実な点検方法です。 |
| ⑤ 窓口へつなぐ | 結果に応じて、お住まいの自治体の擁壁・ブロック塀の相談ページを直接開きます。全国1,741市区町村を収録しています。 |
ブロック塀は、5つの数字で確かめられる
建築基準法施行令が定める仕様を、住民が見て分かる形に落としています。
| 項目 | 基準 | 見かた |
|---|---|---|
| 高さ | 地盤から2.2m以下 | 周囲の地盤から塀の上端まで |
| 厚さ | 10cm以上(高さ2m超は15cm以上) | 薄いブロック、欠損、部分的な減厚 |
| 控え壁 | 高さ1.2m超は3.4m以下ごとに設置 | 一定間隔の直角方向の支え |
| 基礎 | コンクリート基礎がある | 地面に直接ブロックが置かれていないか |
| 健全性 | 傾き・ひび割れがない | ここが不適合なら、他が適合でも「赤」 |
健全性だけを特別扱いするのは、傾いた塀は基準に合っていても倒れるからです。 アプリは仕様適合よりも、いま倒れるかどうかを優先します。
変状がなくても相談すべき擁壁がある
現行の基準に適合しない「不適格擁壁」は、見た目に異常がなくても専門家への相談を推奨します。 アプリは種類を選ぶだけでこれを判定します。
- 空石積み(モルタルで固めていない石積み)
- 増積み(既存の擁壁の上に積み増している)
- 二段擁壁(擁壁の上にさらに擁壁がある)
- 張出し床版付
- 種類が分からない場合
専門家・自治体のための点数法も載せた
国の「宅地擁壁老朽化判定マニュアル(案)」に基づく健全度判定を、専門モードとして実装しています。 擁壁の種類ごとに変状の重みを変え、基礎点(環境+障害)と変状点から健全度を算出します。
健全度 = 基礎点(環境の最大値 + 障害の最大値) + 変状点の最大値
| 合計点 | 判定 |
|---|---|
| 5.0点未満 | 健全 |
| 5.0点以上 9.0点未満 | 経過観察 |
| 9.0点以上 | 要対策 |
住民向けの一次確認と、専門家向けの点数法を同じアプリに載せていることで、 住民が気づいた異常を、そのまま専門家の判定へ引き継げます。
誰にとっての価値か
同じ機能が、立場によって別の意味を持ちます。
住民にとって
- 何から始めればいいか分からない状態から、今日できる1つにたどり着ける
- 気になっていた家まわりの壁について、相談すべきかどうかの見当がつく
- 離れて暮らす親の地域の警報を、自分の端末で確認できる
- 被災後、片付ける前に何を撮るべきかが分かり、手続きが止まらない
自治体にとって
- 住民が相談内容を整理した状態で窓口に来るため、初動の説明コストが下がる
- 専門モードにより、職員の一次判定の物差しをそろえられる
- 避難情報の発令主体が市区町村であることを、アプリが繰り返し明示する
- 公開データ(気象庁・国交省・国土地理院・防災科研)のみを使い、独自の判断を挟まない
専門家・事業者にとって
- 住民が撮った平時の基準写真と災害後の写真が、現地調査の出発点になる
- 点数法の結果をPDFで受け取れるため、所見の作成が早い
- 「不安だが誰に相談すればいいか分からない」層が、窓口まで到達する
設計の裏づけ
主張を支えている実装。
- iOS・Android の両方を同じ設計で実装(SwiftUI / Jetpack Compose)
- 写真は長辺2000px・JPEG品質70%へ自動縮小し、撮影時の向きも正規化して端末内に保存
- 音声入力はメモの文字起こしにのみ使用し、音声データは保存も送信もしない
- 判定ロジック(行動区分・擁壁の点数法・降灰の推定式)には単体テストを用意
できないこと
価値を語るなら、限界も同じ場所に書きます。
- 市区町村の避難情報(避難指示など)の自動受信 → 自治体の発表を直接ご確認ください
- プッシュ通知でのお知らせ → アプリを開いて最新の情報をご確認ください
- 家族との情報共有 → 記録は端末内のみに保存されます
- 建物・擁壁の安全判定 → チェック結果は一次確認です。判定は専門家が行います
避難の判断は、市区町村の避難情報と現地の状況を最優先してください。 詳しくは、専門家や各自治体の窓口にご相談ください。
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